1177 【生物と環境1】自然界のつり合い(1) 食物連鎖

生態系

 どんな生物も一人(1個体、1種)だけでは生きていけません。とりあえず、生きるためにはエネルギーが必要ですが、それをどう調達していくかが問題です。例えば私たちヒトのような動物だと、食料として、他の生物を食べています。ヒト1種だけでは生きていけないのですね。
 じゃあ、植物はどうなのよ、光合成で栄養作れるから他の生物いらないじゃん、といいわれそうです。たしかに、他の生物は必要ありませんが、光合成しなくちゃいけない、ということは「光」がなくては生きていけないということです。
 さらにさらに、水や適当な温度、空気、土などの生物が生きる舞台としての環境が必要になってきます。
 ならばということで、同じエリアにすむ生物と、その環境がいい感じに合わさると、エネルギーや物質がうま~く回って、そのエリアの生物や環境が大きく変化することなくにずっと続けていけたりします(いわゆるひとつの持続可能ってやつですな)。この生物と環境をまとめたものを生態系といって、例えば森林が一つの生態系だったり、湖や池が生態系だったり、また地球全体を大きな一つの生態系ととらえたりします。

食物連鎖と食物網

 草が生えていて、その草をバッタが食べて、そのバッタをカエルが食べて、そのカエルをヘビが食べて、そのヘビをイタチが食べて、そのイタチをワシが食べる…というような、生物同士の食う・食われるという関係を食物連鎖といいます。食物連鎖のスタートは、いつも植物からです。植物は、他の生物を食べず、ただ、食べられるだけですからね(植物にとってはなんか理不尽?)。
 あれ?食虫植物は?という声が聞こえてきそうですね。あれはなんなんでしょうか。それを説明する前に、一つ、「食物連鎖」について確認しておきたいことがあります。ここで動物が「食う」目的は、栄養分(有機物)を得るということです。植物は光合成で自分で作れるので「食う」必要がありません。だから食われるだけなのです(それはそれで悲しい)。で、食虫植物も光合成をして栄養分(有機物)を作っています。しかし、それでは窒素やリンやミネラル等の無機養分が足りず、それを無視を捕まえて得ているのです(その環境では得られない栄養分を摂取していることもあるそうですが)
 なので虫が食虫植物に捕まるのは、ここでいう「食う・食われる」とはちょっと違うのです。
 ちなみにこのときの食物連鎖を、草→バッタ→カエル→ヘビ→イタチ→ワシ などと矢印を使って表すことがあります。この矢印についてはこちらで詳しく述べていました
 ただ、実際の生態系の中での食物連鎖は、ヘビ→イタチ→ワシ のような単純な一直線とは限りません。ワシが直接ヘビを食べることもありますし、草を食べるのはバッタだけではないでしょう。食物連鎖はもっとたくさんの生物の間で複雑にからみ、網のようになっています。これが食物網です。
 食物網については教科書やネットでも図が載っているのでそちらをみてもらえるといいかな。ただ、ネットの一部には、食物連鎖と食物網がごっちゃになっている解説もあるので気をつけて。

生物の数量的な関係

 以前動物園の飼育係の人に聞いた話ですが「飼育している動物のことで考えていることの3分の1は餌のことです」とおっしゃっていました。それくらい餌をどうするかというのは大切な問題ですが、1個体の動物が生きていくためには、たくさんの餌が必要です。1回に食事する量は少なくても、ずっと食べ続けていくわけですから、食べる動物の個体数や重さに比べても、それをはるかに上回る餌、つまりほかの動物が必要になってくるわけです。
 たとえば、植物をネズミが食べ、そのネズミをネコが食べる、という食物連鎖があるとすると、その量は 植物>ネズミ>ネコ となるのです。で、食う方が数が少なく強いので、その関係は食べる側が上、餌になる側が下のピラミッドで表すこともできます。

で、この図でいえば、ちょっとくらい植物が増えると、それに伴い、植物を食べるネズミも増え、たくさん食べるので、植物が減ります。逆に植物が減ると、餌がなくなるためネズミが減り、結局食われる植物の量が減るので、植物が増えるということで、多少なら植物が増えたり減ったりしても、元に戻りやすくなっています。これはネズミと猫の関係でも同様です。こんな感じで、一時的な増減があっても、長い目で見るとほぼ一定といっていいようです。

 ただし、ピラミッドの階層間で派手にバランスが崩れると、うまく戻すことができないこともあります。その一つの例を紹介しましょう。

 世界自然遺産に登録されている小笠原諸島(東京都小笠原村)には、ここでしか見られない希少な動植物が多数生息しています。
 その一つ、アカガシラカラスバトは、環境省のレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)の中で、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いとされる「絶滅危惧IA類」に指定されている天然記念物です。
 ところが、アカガシラカラスバトや海鳥などの繁殖地が、ネコによって荒らされていることがわかりました。そこで、ネコを捕獲し、そのネコを本土に運び、希望者に譲るなどの対策をしました。
 その結果、40羽まで減っていたアカガシラカラスバトは、100羽以上に増えたのです。
 すると今度は、ネコがいなくなったためにネズミがふえ、島固有の貴重な植物を食べ始め、問題になっています。特に、アカガシラカラスバトと同じ「絶滅危惧IA類」に指定されているシマホザキランは10株から6株に減ってしまいました。
(引用 拙著 ニュースとつながる理科のツボ 朝日中学生ウイークリー 2014年1月5日付)

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