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1361 色が消える糊の謎(1) 糊のpHを測る

スティックのりで、塗った直後は色があるのに、しばらくすると色が消えてしまうというタイプのものがあります。塗ったときは色がついているので塗りすぎないですみますね。

たとえば、トンボ鉛筆の消えいろピット固形アラビック カラーグルースティックは青く、トンボ鉛筆の消えいろピット ネオンイエローアラビックヤマト 色消えタイプは蛍光色のネオンイエロー、ヤマトのカラーグルースティックは蛍光イエロー蛍光グリーン3Mのスコッチ® カラースティックのりたのめーるのTANOSEE スティックのり 色が消えるタイプは紫色と、カラーにもバリエーションがあります。

とりあえず今回は手元にあった消えいろピットで実験します。

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さて、そのような色付きのスティックのりが消えてしまうのはどうしてでしょうか。
これ、pHが絡んでいるのです。スティックのりはアルカリ性らしい、

ということで、アルカリ性かどうかを確かめるために、赤色リトマス紙に消え色ピットを塗ってみると

青くなりました!アルカリ性です…いやまてよ、これ、もともとの糊の色じゃないか?!

作戦変更。精製水にBTBを入れ緑色にして、そこに消え色ピットのかけらを入れる。
入れる前と入れた後の色をご覧ください。

青い、つまりアルカリ性ってことだ。pH試験紙で見るとpH9~10ってとこかな。

続いて消え色じゃない普通のスティックのりもいくつか調べましたが。これもアルカリ性でした。

ところが、トンボ鉛筆 スティックのり シワなしピットGは例外的に酸性になりました。

 これは糊の成分の違いです。消えいろPitを含む普通のスティックのりは、ポリビニルピロリドン(PVP)などの接着性のある水溶性の合成樹脂が主成分です。ところがPVPは吸湿性が高く、ドロッとなりやすいので、固形化させるために石鹸の主成分でもある脂肪酸ナトリウムを添加します。この脂肪酸ナトリウムは、天然油脂とアルカリ性の代名詞でもある水酸化ナトリウムがケン化という化学変化をしてできたもので、アルカリ性を示します。 だからスティックのりも石鹸と同じくアルカリ性となるわけです。
 3Mはすごいことに日用品までSDSをつくってネットにアップしています。法的にはそこまでの必要はありません。でありがたく、3Mのスコッチ® カラースティックのりのSDSから成分を見てみると、やはり、PVPがポリ(N-ビニルピロリドン)という表記で載っていますし、脂肪酸ナトリウムとして、ステアリン酸ナトリウムが明記されています。最も多い成分は水ですが。

 ところが、 シワなしピットGはアルコールが大量に含まれていていることを謳っており、成分を見ると、PVP、PGM(35%)、水(30%)などと書いてありました。PGMという成分は他のスティックのりの成分では見かけなかったものです。それが水以上に多く含まれている。これがアルコールなのでしょうね。エタノールとかメタノールとかアルコールと言って一般人が思い浮かべるものではないんだ。
 では、PGMとは具体的に何ぞや?白金族(Platinum Group Metals)は違うとしても、プロピレングリコールモノメチルエーテルか、ポリグリセロールマレアートか、はたまた別の物質か、そこんとこはっきりわからない。こんなことでいちいちトンボ鉛筆に問い合わせるのもご迷惑だろうし、知ったからと言ってそれ以上に話が発展しませんからここで放置しておきます。(とはいえもしご存じの方がいらしたらご教示ください)
 なので、PGMとやらの影響で脂肪酸ナトリウムなしで固化ができたのか、それともPGM自身が脂肪酸ナトリウムを中和してしまえるほどの強い酸なのか(その場合でも固化し続けられるのか?)、はもう追いきれません。
 そういえばシワなしピットGは、黄色い半透明の色で不透明な他のスティックのりと一線を画しているので、やっぱり成分的にも他と違うため、普通のスティックのりがアルカリ性なのに対し、これだけ酸性なのかなと。

 なお、スティックのりから目を転じて、液体のりであるアラビックヤマトを調べたら酸性でした。

 意外なことに、デンプン糊であるヤマト糊 チューブも酸性。てっきり中性だと思い込んでいたので、もう1本別のヤマト糊で確かめてしまったわ。

ただ最近は、酸は写真の劣化原因となるため、酸(アシッド)を含まないAcid Free(アシッドフリー)製品というのも作られているそうです。

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