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0425 【火山と地震11】地震の伝わり方と地球内部の働き(4) 地震の規模

地震の規模

 地震の規模は地震のエネルギーの大きさであり、マグニチュード(記号:M)で表わされます。マグニチュードが大きいほど、地震のエネルギーが大きくなるので、大きな揺れが伝わる範囲も広くなります。
 マグニチュードが2大きいと、ちょうど1000倍のエネルギーとなります。例えばM7の地震はM5の地震の1000倍のエネルギーとなります。32の2乗がほぼ1000になるので、マグニチュードが1違うと32倍(約30倍)違うということになります。


地震に詳しい人がいそうな建築や防災関係のサイトで マグニチュードが1違うと32倍なので、2違うと32=1024倍 という説明がしばしばされ、それをひろって SNS でよくある誤りだ、本来1000倍なのに…とネタにされて議論が始まることがあります。

マグニチュードが2上がるとエネルギーが1000倍となるのは、マグニチュード M と地震のエネルギー E には次の式のような関係があるからです。
log10 E=4.8+1.5 M
ここで M の値が2増えると、log10 E は3増えます。つまり E は103=1000倍となるわけです。

この誤解についての詳しい解説については、ニコニコ大百科にあります。

…が。
多くの人が金科玉条として崇め奉って疑わない
log10 E=4.8+1.5 M
という式ですが、さてこの式はどこから出て来たのでしょうか。
FUNDAMENTALS OF SOIL DYNAMICS AND EARTHQUAKE ENGINEERINGの80-82ページにも解説がありますが、元となる論文は Beno Gutenberg and Charles Francis Richterによる MAGNITUDE AND ENERGY OF EARTHQUAKES (原著1956、2010再掲?ANNALS OF GEOPHYSICS, VOL. 53, N. 1, FEBRUARY 2010です。この論文を見ると例えば1956版の方の4ページTABLE1のところに
log E = 5.8 + 2.4 m
と書かれています。あれ?数値がちょっと違いますね。
実は は統一マグニチュード(unified magnitude)と呼ばれるもので、私たちがふだん言っているマグニチュードとは
=0.63 +2.5 という関係があります。
ってことで代入すると
log E = 5.8 + 2.4 (0.63 +2.5)
 =11.8+1.512 M
ここでの E は単位がいまどき使わない erg(エルグ)です。J(ジュール)に換算したいですね。
1J=107ergなので、 E をジュール単位にするなら
log E =4.8+1.512 M
となります。あえて有効数字を無視して 2.4*0.63=1.512としていますが、
ここで言いたいのは1.5という数字はきっかり1.5ではなく、「約」1.5ということ。
試しに1.512で計算してみると M が2違うとEは約1057倍となります。こうなると1024倍という人に1000倍だよと強気で言っていた人の分がかなり悪くなりそうですね。

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長々と書きましたが、こういう計算をしなくても(せっかく書いたからもったいないので残しておきます)、そもそもこの論文に出てくる式は、どうやら実際のデータを統計的に処理して求められた近似式で、式中の数値は、どうも有効数字2桁あたりで丸めてある、幅(誤差)を含む数字なのではないか、ということはうすうす気が付いてもらえるんじゃないかと思います。

なので1000だろうが1024だろうが、有効数字2桁なら1.0×103の範疇におさまるので、スケールのでかいものを扱う地学特有の「こまけぇことはいいんだよ」の大らかな精神で、不毛なあげ足やマウントの取り合いはやめたほうがいいんじゃないかと個人的には思うのですが、いかがでしょうか。


マグニチュードは地震の加害者(震源)のパワーを表すものに対し、震度は地震の被害者(観測値)の揺れの大きさ(影響の大きさ)を表しています。もっと具体的に言うと、スピーカーのボリュームがマグニチュード、そしてその周りでスピーカーからの音を聞いている人がどれだけうるさいと感じたかが震度です。スピーカーのボリュームが同じでも、スピーカーから近ければとうるさく思うでしょうし,遠いとそれほどうるさく感じません。

ちなみにここ1週間の地震のマグニチュードの値は気象庁のこのページに載っています。

2020/9/17 18:00 にみたところ、ほどんどの地震がマグニチュードは2とか3とか4代で、12日11時44分に起こった最大震度4を出した地震のM6.1がいちばんマグニチュードの大きなやつです。

さてここで問題です。
この地震(マグニチュード6.1だと計算しづらいのでM6.0とします)と、あの東日本大震災を起こした東北地方太平洋沖地震(M9.0)では地震の規模(エネルギー)は何倍違うでしょうか。

催眠術だとか超スピードだとか そんなチャチなもんじゃあ 断じてない
もっと恐ろしいものの片鱗を 味わってください。

答え(CTRL+A) : 32000倍  東北地方太平洋沖地震がそんじょそこらの地震とはレベルが違うことが分かっていただけると思います

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