1137 白表紙本

 学校で使う教科書は、表紙をよく見ると小さな字で「文部省検定済教科書」と書かれています。すべての教科書は文部科学省の検定に合格して発行されているのです。

 で、教科書を検定するときには、ひいきの出版社にもう少しこう何というか 手心というか…を加えたりしないように、だれが書いたか、どこの会社の教科書かが分からないように、表紙や奥付などのページには何も書かれず、ただ真っ白になっています。
 あ、さすがに表紙には「中学校理科1年」くらいは書いていますけど。
 ただ実際は現在使われている教科書と見比べればどこの会社の教科書かはバレバレでしょうが…

 で、この「白表紙本」は、検定以外非公開とされ、文部科学省は各教科書発行会社に外部に流出しないよう徹底管理しなさい!と指示を出しています。

 それでも過去には、この「白表紙本」が教材会社に流出し、教科書ベースの参考書や問題集を作るのに活用したり、一般の学校の先生に「白表紙本」を渡してミスチェックしてもらうなど、このルールは守られていませんでした。
 これだけ見れば「別に流出したっていいじゃん。そもそもなんで白表紙本は非公開というルールが理不尽なだけではないか」という感じがしなくもありませんね。
 ただ、私も教科書に関係している身なので、出版社にご迷惑をおかけするといけないですので多くは語りませんが、非公開のはずの白表紙本が流出してしまったことによって、過去にいろいろまずいことが起こってしまったのは事実です。…語ってしまった(汗
 詳しくは、元教科書会社の社員の方が書いたブログの一連の投稿       がなかなかリアルです。

 そんなわけで、現在、「白表紙本」は大変厳格に管理しなくてはならないのですよ。もう私にとっては、ジエチルエーテル並みの危険物です。

 で、今日は、理科準備室で見つけた、昔の白表紙本を紹介したいと思います。白表紙本の宿命として、奥付など、出版社や書名、年代などのプロフィール情報が全くないため、詳細は不明です。
 ただし、章立てを見ると、生物のなかま、水と空気にはたらく力、水と空気の成りたち、生物のくらし方、地球、音、熱と系統的な章立てとなっていますが、中1の内容としては昭和33年以降のいずれの時期の指導要領とも一致しません、
 これは、昭和33年に告示された学習指導要領が施行される昭和37年より前に使われていたものと考えられます。昭和37年より前ということは、昭和26年試案の生活単元学習・経験主義の指導要領では…と考えるかもしれませんが、過去の記事でも紹介しましたように、「這いまわる経験主義」による学力低下の批判も強く、昭和30年ごろには、教科書も系統的なものに変わっていきました。この白表紙本も、その頃の教科書だと思われます。

 ということで白表紙本の実物。タイトルの活字が別の紙に印刷されて表紙に貼られています。

口絵のページ。この3ページ以外は黒一色の印刷です。

連通管毛細管現象の話も

浮力。卵と液体の密度が同じだったら水中で止まる、というのは誤りでしたよね。

上から紙を貼るという形で修正を入れています。

そういえば平成一桁の時代でしたが、大学院にいた時、指導教授の教授室の前にごみとして白表紙本を捨てられていました。当時教職志望で私立校の非常勤講師をやっていた私はそれをこっそり拝借して読んでいましたが、なんでこの教科書、表紙が白いんだろうと謎でした…。

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