作用・反作用の法則はともかく、運動をみるときは「速さ」と「向き」をチェックすること、速さについて、さらに記録タイマーの操作についてわかったところで(細かい操作法は機種によって違うので説明書を見てね)、記録タイマーを使って運動を記録し、それを使ってどんな運動なのかを解析していきましょう。
まずは、シンプルに水平面上での台車の運動を。
ストロボ写真だとこんな感じになります。
ですが今回は、台車に記録テープをつけて、記録タイマーで運動を記録していきます。
するとこんなふうにテープに点が記録されます。
ここから記録テープの処理のしかたについて説明しますが、実際にテープの処理をするときは、説明を聞き終わって、やり方やそうする理由の全体像を理解してからやることをお勧めします。
で、記録テープあるあるその1。
どっちが最初の点でどっちが最後の方かわからなくなる。
⇒台車につけたセロハンテープがついている方が最初です。
テープは最初の方は、台車に力を加えた影響があったりして不安定なので、ある程度点の間隔が等間隔になったところから点をとります。ここでは点を取り始めるところに黄色い線を引いてみました。
さらに最初の点から1234512345…と点に数字を5サイクルで打っていきます。(60Hz地域は123456123456と6サイクルで打っていきます)
こうすると、1打点間隔は1/50秒(または1/60秒)分に相当しますから、5(6)打点間隔で5/50(6/60)秒、つまり0.1秒分となります。このとき、黄色い線と線の間の長さが0.1秒間に移動した距離ということになります。
そして、5の点に重なるように線を引いていきます。
記録テープあるあるその2。
この直後に線のところをはさみで切って、切ったやつの順番がわからなくなる。
⇒だからそうならないように次のようにします。
そして黄色い線の間ごとに順番に番号を①②③と振っていきます。
そして黄色い線で切って、切ったテープを次のように方眼紙に①②③…と順番に並べて貼ります。
このとき、横軸は、テープを①②③と並べて貼ってあり、1本につき0.1秒ですから、1本ごとに0.1秒の時間の経過を表します。つまり横軸は時間になります。
縦軸は0.1秒間の移動距離です。0.1秒という一定時間に動いた距離ですから、これは「速さ」ということになります。
切り分けたテープ1本1本について、長さと0.1秒間の速さについて表にしてみましょう。
ここで速さ(秒速)は、テープの長さを0.1秒で割ればいいわけですが、0.1秒で割るということは、つまり、10倍するということですよね。これなら暗算でもすぐに求められます。だからわざわざ5(6)打点にして0.1秒ごとにテープを切ったのですよ。
グラフにもしてみますね。
速さを考える場合、1本目のテープは0秒から0.1秒の範囲での平均の速さをさすので、0も0.1も平等な立場です。なので、グラフの横軸でいうと0.1秒ではなく、もちろん0秒でもなく、間をとって0.05秒のところを1本目のテープの代表として点を打ちます。
同様に②のテープは0.1秒から0.2秒の範囲をさすので、グラフの横軸でいうと0.2秒ではなく0.15秒のところに点を打ちます。
微妙なこだわりですが、このようにする意味がご理解いただけますでしょうか。
そうそう、このような縦軸を速さ(v velocity)、横軸を時間(t time)としたグラフをv-tグラフと呼ぶことがあります。
ちなみにこのvとかtは筆記体で書くことが多いのですが、黒板に手書きで書かれた小文字のvの筆記体を、ひらがなの「ひ」と壮大な勘違いをしている人は案外あるあるなので、気をつけましょう。(笑うかもしれないけど結構いますよ)
速さは、時間の経過とともに、摩擦のために少しずつ速さが落ちていますが、ほぼ一定の速さで動いているといえます。ってか、そういうことにしてください。もう少し摩擦のないところでやりたかったのですが…。
水平な面での物体、すなわち、力がかかっていない(もしくはかかっていてもつり合っている)物体は、一定の速さで動き続けます。
一定の速さ、すなわち等速です。そして、向きについては同じ向きで動きますのでその軌跡は直線です。したがってこのような運動を等速直線運動といいます。
等速直線運動ということは、等速で「永久に」動き続けます。直感的に、力が加わっていないのに永久に動き続ける、というのは、少なからず違和感があるかもしれません。転がっているボールはやがては止まるのが当たり前ですし。この辺りの話については、石垣での研修会でも話題になった「宿題」でもありますので、「慣性の法則」あたりの回か、補講でもしてまた考えていきましょう。
ちなみに、この2つ、形が同じですが、本質的にも同じです。縦軸で考えると0.1秒間のテープの長さは、時間当たりの距離ですので、「速さ」ということになります。横軸はテープを順番に貼っていったのですから、時間の経過を意味します。
これがわかると、「v-tグラフの面積が移動距離になる」という考え方がわかりやすくなります。
下の図を見てください。うすい赤色のところは0秒から0.3秒までのグラフの面積を表していますが、
対応するテープで考えると1本目、2本目3本目の合計となります。つまり、1~3本目のテープの長さの合計ということになり、0秒から0.3秒までの移動距離ということになります。
ということで、先ほどの表に、テープの長さを蓄積した「移動距離」のらんを付け加えてみました。
すると移動距離のグラフは、こんなふうに比例のグラフなります。
なお、v-tグラフの時は1本目のテープに対応する点は0.05秒でしたが、今度はt=0.1秒の瞬間における移動距離を示しているのですから(速さのときは0秒から0.1秒までの平均の速さだった)0.1秒のところに点を打って構いません。
距離=速さ×時間 という公式がありますが、等速直線運動のように速さが一定なら、距離は時間に比例するというのは、言われてみればもっともな話です。
ちなみに、このあたりは、教える順番にいつも迷うところです。
1.「物体に力が働かない運動(水平面の運動)」と「物体に力が働く運動(斜面の運動)」をどちらを先にするか
物体に力が働かない運動から始めるのが、「速さの変化」を考えなくてよいのでシンプルでよさそうですが、物体に力が働く運動(斜面の運動)から始めるのも、落下のイメージから考えると自然な流れだし、他にもなんか理由があった気がしました…。
2.「慣性の法則」をどのタイミングでするか
物体に力が働かない運動が等速直線運動というところと関連付けるやり方もよいですが、運動の話をしているときに割り込むのもちょっと気になるところです。
3.「力」と「運動」をどちらを先にやるか
力の合成や分解などとこの運動のところをどちらを先にやるかも、一つの論点です。斜面の運動のところでは、「力の分解」の考え方を利用して、角度を大きくすると台車にかかる力が大きくなる、だから角度が大きいと速さの変化が大きくなる、とつながるのですが、一方で、…あれ、なんかこれも理由があったはずなんだけど忘れてしまった…
実際、教科書も、会社や出版年によって 水平→斜面 だったり 斜面→水平 だったり、 力→運動 だったり 運動→力 だったりします。それぞれのやり方に理由と哲学があるはずなので、どの順番でやるかは生徒の実態をもとに教師が計画していくものなのでしょう。
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